インテリアライフスタイル展 マーケットに響くデザイン ⑷
先般開催のインテリアライフスタイル展では、連日ライフスタイルサロン・セミナーが催されました。
その中で、興味を引いたのがショップ・アクタスのベテランバイヤー、吉田 桜子氏のお話です。ジャーナリストの本間 美紀氏をモデレーターとして対談形式で行われました。
今、日本ではライフスタイルショップが増えています。これは衣・食・住にまつわる様々な生活商品をまるごと提案するショップです。これには大きく二つの型があるようです。ファッションブランドやセレクトショップが衣類だけでなく食や住も手掛けるアパレル業界発のものとインテリア業界発のもので、アクタスは後者です。
創業1969年の同社は、欧州輸入家具を他に先駆けて扱い、イケアを導入したこともあるなど、日本のモダンインテリアはここから始まったともいわれています。
昨年度売上高は161億で、50周年を迎える2020年には200億が目標とのこと。店舗数は28店で、2020年に40店を目指しているそうです。来客数は現在年間1,200万人といいます。
著しい成長を遂げるアクタスですが、そのどこに消費者は惹かれるのでしょう。同社の心に響くデザインが語られました。
コンセプトは「上質で、丁寧な暮らし」です。モノを売るのではなく共感してもらえるスタイルを売ることといいます。ですから画一的な品揃えや店作りを行わず、エリアのお客様に合わせて、商品を編集。什器などもこの店にしかないというものをつくり、使っているといいます。
これにはスローハウスという業態を発足させ、2012年にフラッグシップストア、アクタス青山店をオープンさせたことも契機となっているようです。スローハウスはアクタスの理念をさらに深堀したコンセプチュアルストアという位置づけのようです。
実際にお店を訪ねてみました。
アクタス青山店は入口に緑があり、低いアプローチで誰かの邸宅でも訪ねているかのような雰囲気です。
2014年に立ち上げた天王洲スローハウスは、運河沿いの倉庫を改装したショップで、とくに家具の継承をテーマにしているといいます。店内では日本の職人が丹精込めてつくったというヴィンテージ家具が目立ちます。
また昨年二子玉川に開業したスローハウスはセンスのいいマダム狙い、またこの春スタートしたスローハウス銀座はファッションが中心といいます。
元々インテリアショップだったアクタス。それが今やこのような堂々とした存在感のあるライフスタイルスタイルカンパニーに変貌しました。
吉田氏はこれについて、デザイナーやクリエイティブと呼ばれる人々とのコラボが欠かせなかったと述べています。その転機となった二つとは次です。
一つは、米国ポートランド発のライフスタイル誌「キンフォーク KINFOLK」代表のネイサン・ウイリアムズ氏との出会いです。そしてもう一つが「ファブリカ FABRICA」で、ここからファッションブランドの「アウアー Ouur」とファブリックの「ファブリシア Fabricia」が生まれたといいます。
アウアーは、飾り気のないシンプルで心地よい自然なラインにこだわったコレクションを展開。布の方も装飾を極力排除し、長く使えて飽きのこない、汎用性のあるものを、適量生産、適正価格で提供しているそうです。産地はベルギーとトルコが中心といいます。
最近はリノベーション事業にも乗り出し、「北欧風のスタイル」と「スロースタイル」をキーワードに、家具の再生・修復やリフォームも取り扱っているとか。
見た目が良いだけでは売れない時代に、モノと環境をフィットさせて、友達の家に行ったら、気に入ったものがあったという、そんな感覚の店づくりをしていきたい。そしてその家の香りのようなものを遊びながら楽しむ、そんな文化を育んでいきたいと語って、しめくくりました。
さわやかな風が吹き抜けるようなすてきなトークイベントでした。
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