「竺仙」 創業した浅草の地に戻って展示会
浴衣や江戸小紋で名高い「竺仙」の展示会が、7-9日、東京都立産業貿易センター台東館で行われました。テーマは「江戸の涼風」で、今年は場所を創業の地である浅草に移しての開催でした。
会場正面には、浅草寺仁王門に掛けられている「小舟町」大提灯を染めた綿布が飾られていました。同社は現在、日本橋小舟町が本拠地で、毎年「小舟町」名を大書した大提灯を奉納しているといいます。この展示は浅草への復帰を記念するもので、「江戸の粋」を現代に蘇らせる、竺仙の心意気を感じさせられました。
ご担当者のお話によると、浴衣は最近、青が復活する傾向にあるといいます。
伝統への揺り戻しがきているようで、竺仙のような大人の雰囲気のある浴衣に目が向き始めているようです。華やかな色使いのものも豊富にデザインされていますが、柄行きが竺仙の古典柄なので、しっくりと落ち着いた感じに見えます。
素材では涼やかな綿絽が人気だそうです。とくに緯糸を7、5、3で織った乱絽が好評とか。不規則な絽目の透け感が、風流な趣をかもしだしています。
(写真左)
江戸前浴衣の代表といわれる「長板中形」も出品されていました。工程は小紋染めとほぼ同様ですが、一つ大きく異なっているのが、型付けを表裏両面にすることです。これにより染め上がりの絵際がきっぱりとして、藍が引き立ちます。
それにしても寸分違わず表裏に型付けをするには、高度な技術が必要です。この技術を保持するのは、今では東京・八王子の小紋中形藍染工場の野口 汎氏、ただ一人といいます。
会場では以前このブログ2014.1.15付けで紹介した後継者の息子さんがいらっしゃり、点描のような染め(写真左)を見せていただきました。その繊細そのものの匠の技に、改めて感銘しました。
この他、絹紅梅や小千谷縮など、様々な着物を見せていただき、その中に「キティちゃん」に加えて、若者に人気の「ウルトラマン」浴衣があって、びっくり!これに続いて「鉄腕アトム」浴衣の企画もあるそうです。
そこには伝統をひたすら守るというのではない、新しい視点を盛り込んでイノベーションする竺仙の姿がありました。だからこそ天保の時代から150年も生き続けている老舗なのですね。そんなことをしみじみ思った展示会でした。
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