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2015年9月 5日 (土)

「蔡國強展:帰去来」その火薬ドローイングとは!

 今、美術界で話題のスーパースター、蔡國強展を見に横浜美術館へ行ってきました。
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 蔡國強は、1957年、文化大革命時の中国・福建省で生まれ、上海で舞台芸術を学んだ後、画家を志し、1986年から1995年まで日本で活動。その後ニューヨークに渡り、世界的アーティストの仲間入りをします。とくに火薬、といっても花火用のものを使い、紙やキャンバスに絵を描くことで知られるようになるのですね。

 そのコンセプトは、地元の人々とともに、その土地の歴史や文化、社会問題を映す象徴的なものを基に作品をつくっていくことといいます。

 今回、日本に帰国しての展覧会ということで、絵画の原点に返った新作を発表しています。タイトルは「帰去来」で、陶淵明の「帰去来の辞」に由来しているとのことです。

 エントランスホールの吹き抜けの空間で展示されていたのが、火薬ドローイングの大作「夜桜」です。これは横浜出身の日本画家、横山大観の「夜桜図屏風」をヒントに、高知和紙にスケッチし、切り抜いて火薬を蒔き、爆発させ、その破壊の跡を使った、何とも無常を感じさせるアートです。これを創るには、ホールをしっかり養生して、8日間にわたり、一日一回、炸裂させたといいます。瞬時の爆破の痕跡がありありと残っていて、さすがに凄い迫力です。
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 日本の桜花も、中国伝統の火薬も、ともにパッと散るはかない命の象徴です。それを上から見下ろしているふくろうも、蔡國強自身を表しているようです。人生のむなしさのようなものが表現されている、なかなか意味深な作品と思いました。

 もう一つ、感銘したのが、ポスターやちらしに掲載されている「壁衝き」です。広い会場をいっぱいに占拠しているのは、等身大の狼たちです。彼らは剥製ではなくで、毛が羊の毛であるなど、人工的につくったものだそうです。本物そっくりによくできていて、びっくり!します。
 この狼の群れが空中を飛んで、ガラスの壁を飛び越えようとしているのですが、決して飛び越えることはできません。再び列に戻って、同じことに挑戦するのです。狼の数は、99頭で、この99という数は、中国では「久久=永遠の連続性」を表しているともいいます。
 制作されたのは、2006年のベルリンでの初個展のときで、現在はドイツ銀行が所蔵しているとか。ガラスの壁は、かつての「ベルリンの壁」と同じ3mの高さで、狼は人間の寓意であり、当時の自由を求める人々を示唆しているようです。
 見える壁は壊れても、見えない壁を壊すのは難しい。これは見えない壁という、すべてに通底する問題提起でもあると思いました。集団で行動し、ブレーキが利かなくなる人間を戒めているようでもありますね。

 他に、春夏秋冬を題材にした火薬絵画やインスタレーションなど、スケールの大きい作品が揃っていました。

 日本と中国の融合や、人間と自然の循環を紡ぎ出す蔡國強の世界を堪能したひと時でした。
 なお、本展は10月18日までの開催です。

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