防災ツール「プレファブコート ライス神戸」
この3月半ば、大阪に出張した折り、神戸ファッション美術館に立ち寄り、「プレファブコート ライス神戸 Prefab Coat Rice Kobe」を見てきました。
これを手掛けたのは、衣服造形家の眞田岳彦氏です。同氏が主宰するデザイン事務所「サナダスタジオ」からのお知らせで、「関西へ行ったら、ぜひ見たい」と思っていた展覧会でした。
今年は阪神・淡路大震災から20年目です。同美術館ではこれに因んで、災害時に何ができるかを考える特別展示「衣服にできること」を開催していました。そしてこの中で同氏が取り組む防災ツール「プレファブコート ライス神戸」が、インスタレーションされていました。
「プレファブコート」は、2005年に新潟県中越地震が起きたとき、人々の心傷を緩和したいとの思いで制作されたといいます。この新作が、「プレファブコート ライス神戸」です。神戸の人々の声を参考に、新しくデザインされました。
コートというように着衣ですが、ファスナーを全開し広げますと、一枚の長方形のシートになってしまいます。これを繋ぐとパーティションやテント、敷物になります。長さ1.5 m、幅0.9mの袋にもなるので、寝袋に使えます。またシートを多数連結すれば、簡易シェルターとしても利用できます。といったように、普段はコートなのに、災害時には多用途で活躍するツールになるのです。
中でも今回、とくにこだわられたのが、コートをカーテンにすることだったといいます。神戸でのアンケートで、もっとも多かったのが、「避難所ではプライバシーを確保できる仕切りが欲しい」の回答だっそうで、このためシート上下に穴を開けてあるのです。
素材は、単なるポリエチレンのビニールに見えます。でもそこにはライス、つまりお米やもみ殻などが20%含まれていて、稲のほのかな香りが伝わってくるようでした。色も稲穂のようなやさしい色で、「紅紅梅」という縁起がよいとされる花模様がプリントされています。心が和む、そんな温かい気持ちにさせられます。
今、ネパールでは大地震で、国が持つかどうかの大変な事態になっているようです。災害は忘れた頃にやってきます。「プレファブコート ライス神戸」のようなものがあったら、どんなにか心強いことでしょう。
サバイバルして生きるために、お互いの心をつなぐデザインが求められる昨今です。このようなコートの普及が、もっともっと図られるべきでしょう。その可能性を強く念じながら、美術館を後にしたことでした。
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