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2015年1月 5日 (月)

映画「ビル・カニンガム&ニューヨーク」を見て

Main_large  このお正月休みに、ビル・カニンガムのドキュメンタリー映画「ビル・カニンガム&ニューヨーク」をビデオで見ました。日本でこの映画が公開されたのは2013年春です。そのときぜひ見たいと思っていましたのに、忙しさに紛れてずっと見逃していました。

 ビル・カニンガムはニューヨーク在住の名物ファッション・フォトグラファーです。1929年生まれといいますから、今年で御年86歳になられますけれど、ニューヨーク・タイムズ紙でファッションコラムを担当されている、バリバリの現役です。
 私はいつも、同紙WEBサイドの彼の動画「オン・ザ・ストリート」で、トレンドチェックしています。彼はストリートファッション観察の元祖で、えっ!と驚く奇抜なスタイルを紹介しているので、見ていて楽しいです。
 現在、掲載されているのは、昨年ニューヨークのメトロポリタンミュージアムで開催された「チャールズ・ジェームス」展に因んだデビュッタントドレスです。従来のダウンタウンからアップタウン志向に、ファッションイメージが変化していて、若い人たちがチャールズ・ジェームスのようなハイソなドレスに目を向け始めていることがわかります。

 この映画で、本当にすてき!と思ったのが、ビルの屈託のない笑顔でした。仕事が好きで楽しくてたまらないといった感じなのです。
 その清貧?な生活ぶりにも驚かされます。車には乗らずいつも自転車で、青い上っ張り姿です。雨用ポンチョが破ければテープを貼り、「ニューヨークっ子はものを粗末にする」とつぶやきます。「コーヒーは3ドルでいい」と言い、パーティに招かれても食事には手を付けずにカメラ一筋です。カーネギー・ホール上階の小さなスチュジオに一人住まいし、部屋はフィルムが詰まったキャビネットでいっぱい、バストイレは共同というのにもびっくりします。

 アメリカン・ヴォーグ誌編集長のアナ・ウィンターは、19〜20歳頃からビルに写真を撮ってもらうのが楽しくて、今も「ビルのために毎日、服を着る」と言います。80歳を越えてなお現役のスーパーモデル、カルメン・デロリフィチェも、水たまりを飛び越える写真を撮られて、「ピルの方が楽だしアヴェドンより自然だった」と語り、ファッション・アイコン、アイリス・アプフェルは「会うたびに写真を撮られたわ」と自慢するように話します。ビルは「クッキー型のようなファッションはつまらない」と、着飾った女性を街で探しては撮りにいきますが、女優カトリーヌ・ドヌーヴにパパラッチが群がるのを見て、「撮るかどうかは、ファッション次第」と言ってのけます。
 そして自分は写真家ではない、街で撮ったものを記録しているだけとあくまでも謙虚。「自由が大事」とノーギャラでやる、というのも驚きです。

 彼の語録で印象深いのが、最初に出てくる「最高のファッションショーは、ストリートにある」と「ファッションというのは、現実を生き抜くための鎧である。手放せば文明を捨てたも同然だ」というところでしょう。
 今やファッションはストリートから始まります。その先導者の言葉だけに、重みがあります。

 それにしても、「好きなワーク」もとことん追い求めていくと、彼のような清廉な哲学者のような人物になるのですね。

 映画制作に彼は乗り気ではなく、交渉に2年、10年がかりで完成したとか。2010年に初公開されますが、ニューヨークのたった1館だけだったそうです。それが口コミで世界中に広がっていきました。

 ファッション業界人でなくても、なかなか楽しめる名画ではと思います。

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