「魅惑のコスチューム:バレエ・リュス」展
「バレエ・リュス」は、フランス語で「ロシア・バレエ」のこと。20世紀前半、パリを魅了した伝説のバレエ団で、現代の芸術とファッションの源泉となり、またピカソ、マティスといった画家たちを魅了しました。
このバレエ衣裳を展示する「魅惑のコスチューム:バレエ・リュス」展が、東京・六本木の国立新美術館で、9月1日まで、開催されています。国立美術館で衣裳展とは珍しいと、早速行ってきました。
会場には約140点、100体の美しい衣裳を纏ったマネキンが、広々とした空間に浮かぶようにディスプレーされています。360度、どこからでも見ることができる、というのもうれしいレイアウトです。
解説によると、これらの衣裳はオーストラリア国立美術館所蔵のもの。1973年、ロンドンのサザビーズのオークションにかけられていたものをオーストラリアが購入し、その後30〜40年かけて修復されたものといいます。ロシア・バレエは、創設者のセルゲイ・ディアギレフ亡きあと、オーストラリア公演を繰り返し、そのまま彼の地に留まったダンサーも多かったようです。
展覧会は4章構成になっています。
第1章 (1909-1913)
ディアギレフ率いるロシア・バレエ団が、1909年、パリにデビューし、一大センセーションを巻き起こした頃です。レオン・バクスト手掛ける鮮やかな色彩と贅沢な装飾の衣裳や舞台装置は、それまでの白いチュチュのイメージを覆し、また女性のようにも見える男性の天才ダンサー、ニジンスキーがダイナミックな振り付けで大活躍します。「シェエラザード」や「青神」など、アラビアやインドの物語も人々を熱狂させ、新しいスタイルの総合芸術として、バレエ界に衝撃を与えました。当時、パリモード界で「クチュールの王様」と呼ばれたポール・ポワレも、この影響を受けた作品を次々に発表していきます。
第2章 (1914-1921)
モダニズムの時代となり、ニジンスキーに代わって、レオニード・マシーンが登場し、衣裳デザイナー、ナタリヤ・ゴンチャローワが現れます。また新しい芸術運動に関わっていた画家たち、マティスやピカソ、アンドレ・ドランらも、バレエ衣裳をデザインするようになります。
第3章 (1922-1929)
借金取りに追われながらも、「眠り姫」をヒットさせ、ロシア・アヴァンギャルドの前衛的作品に挑戦していった時代です。シュールレアリズムの先駆けといわれる画家、ジョルジョ・デ・キリコがデザインした「舞踏会」の衣裳も展示されています。
こうした画家たちの二次元の作品を、衣裳という三次元立体で見ることができるのも、興味深いです。
第4章 (1929〜)
ディアギレフ没後、1932年にロシア人実業家、バジル大佐により「バレエ・リュス・ド・モンテカルロ」が結成され、オーストラリアで公演が行われます。
「バレエ・リュス」の映像は、映画が発達しつつあった時代であったにもかかわらず、残されていないのだそうです。このこともあって、次第に伝説化されていったようです。
もう二度とあらわれないだろう、といわれる芸術家集団のパレエ団。その輝きの息吹を、身近に感じ取ることができた稀有な展覧会では、と思います。
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