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2014年6月30日 (月)

「ヴァロットン―冷たい炎の画家」展

 日本で初めてのヴァロットンの回顧展「ヴァロットン―冷たい炎の画家」が今、東京・丸の内の三菱一号館美術館で開催されています。先日、その特別内覧会に行ってきました。
 同展は、オルセー美術館とフェリックス・ヴァロットン財団監修による国際巡回展です。ヴァロットンはヨーロッパでは人気の画家ですが、日本ではほとんど知られていません。でもだからこそ、リスクを負って展覧会を開く意味があると、館長の高橋氏は強調します。
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    入り口には、同美術館が所蔵するヴァロットンの木版画150点の一つが、ポスターで展示されています。

 ヴァロットンはスイスのローザンヌに生まれ、16歳でパリに出奔し、ボナールらが属するナビ派に入るものの、独自の道を歩みます。その独特の視点で描かれた名作数点を、学芸員の杉山 菜穂子氏が解説してくれました。

Cimg50741_2  まず「ボール」(1889年)という作品です。前景に女の子、背景には大人が描かれていて、明るい陽光の中の少女は、影のような大人の世界から逃げようとしているかのようにも見えます。無垢な女の子は俯瞰的に、暗い森の中の大人は横からの視点で、描き分けられている、奇妙な感覚の絵です。

Cimg50711_2  次に「夕食、ランプの光」(1889年)。裕福な画商の娘と結婚したヴァロットンが、家族と食卓を囲んでいる風景です。一見和やかな団らんなのに、陰鬱な気分が感じられます。前景の大きな黒い影は、画家自身で、この絵には家族との不和が表現されているといいます。こうした手法はヒッチコック映画でも用いられていて、当時としてはかなり現代的な表現だった、と思われます。
 
Cimg50731  さらに「貞節なシュザンヌ」(1922年)。男性2人が女性に言い寄っているのか、逆に女性が男性を誘惑しているのか、これも奇妙で斬新な作品です。ピンク色の椅子は劇場のボックス席で、フランス語で「ベニョワールbaignoir(浴槽)」ともいうので、神話「水浴のスザンナ」とのダブルミーニングを表しているのでは、といいます。
 ヴァロットンには、このような神話の主題を新しく解釈してパロディ化した作品が数多く、本展でも、たくさん展示されています。
 
 現実を冷たく見つめる視線の先に、炎のような情熱を燻らす、“冷たい炎の画家” ヴァロットン。彼の重層的な視点は、シュールで、現代性を感じます。
 なお、展覧会は9月23日までの開催です。
(写真は、いわゆる一点撮りでなければよいということで、許可を得て撮影しています。)

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