山本耀司「クリエイションの核心ー比類なき創造力」
このほど開催された「文化ファッション大学院大学(BFGU)」ファッションウィークで、ファッションデザイナーの山本耀司氏による特別講演が行われました。
テーマは「クリエイションの核心ー比類なき創造力」です。
山本耀司氏といえば、言わずと知れた世界のトップデザイナーです。つい先頃「All About Yohji Yamamoto from 1968 山本耀司。モードの記録。」を文化出版局から出版されたばかり。この本には文化服装学院に通う学生であった1960年代後半から現在までの足跡が紹介されています。
今回の講演も、まずはご自身の生い立ちから始まり、開口一番、飛び出したのがお母様への感謝の言葉でした。鋭い語り口の中に、人を思いやる優しい温かいお人柄がにじみ出ていて、感動させられる、と同時に、日本のファッションやモノづくりの現状に「喝を入れる」、示唆に富んだ内容で、ファッションを志す若者たちには大きな刺激になったと思います。
その概略を簡単にまとめてみましょう。
年二回のコレクションを創造し続ける、その原動力は、時代に対する反骨精神からとのこと。この心が培われていったのは、多分に洋装店を開いて育ててくれたお母様の影響が大きいようです。恐るべき、母の力ですね!
こうして西洋の調和のとれた服装美学に対する反抗心から、服づくりを始めるようになり、1980年代初頭、パリコレにデビュー。ジャーナリストからは散々叩かれたといいますが、これがかえって気持ちがよかったとか。
ともあれこのときは、理解のあるバイヤーが受け入れてくれたこともあって、10年後にはファッション・マイスターと称されるようになります。しかし実はこの頃が一番つらかったそうです。反逆したつもりが逆に迎えられてしまって、拍子抜けをし、何をつくったらいいのか、わからない混迷の時期だったといいます。
そこで反抗の相手をご自身の過去に切り変えたのだそうです。自分を見つめ直すことで、コンディションがわかり、周りも見えてきます。再び次のシーズンのイメージが湧くようになり、これが持続し、ビジネス継続のパワーになっているといいます。
最近はファストファッションに抵抗しているとも。そして日本がコンビニ化していることに異議を申し立てます。全国津々浦々、同じようになってしまったことを、「便利なことは醜い、多少不便が美しい」ときっぱり切り捨てます。
またコンピューターの画像を見て分かった気分になっている若者たちには、本物を見る力が大切、見る力を養うことが大切だということを強調。見た気になっているだけで、本当に見ていない若者の現状を憂え、これはモノづくりの危機的状況と警告を鳴らされていました。
最後に、質問に立った若者が、「ファッションの未来」についての見解を問うと、即座に「勝手にしやがれ」と一言! 孤高の人らしい幕切れに、拍手喝さいの嵐が鳴りやみませんでした。
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