“江戸の粋”守り続ける「竺仙」展示会
「竺仙」が、お正月気分がまだ抜けない1月9〜11日に、東京都立産業貿易センターで、今年度の展示会を開催しました。江戸小紋をはじめ、様々な浴衣、風呂敷、手拭いまで、新作が勢揃いしています。今回は同社が永遠のテーマとしている「竺仙の染めハ、粋ひとがら」を具現化する60回目の記念展でもありました。
今、江戸東京博物館で「大浮世絵展」が開かれています。
竺仙の展示会場で目立っていたのが、この浮世絵に因んだ夏の着物です。
まず正面入り口での華やかな展示に目が奪われます。縁台と花火のような和傘をあしらった、江戸の舟遊びの演出です。
今期はとくに千鳥の柄を訴求されたとのことで、あちらこちらに胸をふくらませた千鳥の文様がみられました。千鳥は、実は冬の季語なのですが、夏には涼しく感じられることから、江戸時代、浴衣に“波に千鳥”がしきりと用いられたとのことです。格式のある着物には少ない柄で、千鳥は、まさに庶民のものだったといいます。江戸の“カワイイ”はこれだったのかも、と当時の浮世絵を参照させていただきながら、思ったりもしました。
左写真は「大浮世絵展」で、展示中の浴衣だそう。 “見返り美人”の 浮世絵をもとに複製されたもので、くぎ抜き模様に丸い花の文様が描かれています。
これが「竺仙」を代表する染物、長板小紋中形本藍染です。
今ではこの技術を保持しているのは、東京・八王子の小紋中形藍染工場の野口 汎氏、ただ一人でいらっしゃるとのことです。
現在は息子さんが後を継いでおられ、会場で染め付けの実演をされていました。染めるまでの前準備の段階が一番大変で、とりわけ気を使うのが、布を長板に正確に置くこと、と話してくれました。
写真右は糊をつけているところです。この後、藍染めされて、この糊が落ちると繊細な白抜きの模様が浮き出てきます。糊は、糠とお餅から作るのだそうで、野口氏の工場では、一貫してすべてを、道具も含めて手作りされているとのことです。
こういう職人技を維持し続けることは、並大抵な努力ではできないことでしょう。野口家と天保年間からずっとこれを大切に、守り続けている「竺仙」に改めて敬意を表します。
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