「カリブの宝石」シーアイランドコットン
先般開催されたジャパン・クリエーション(JFW-JC)で、「幻のコットン、シーアイランドコットン」と題するセミナーが行われ、シーアイランドコットン(海島綿)を販売するシーアイランドクラブの伊藤薫氏が登壇されました。長年お付き合いしている海島綿協会ですが、シーアイランドコットンについてのまとまったお話を聴くのは初めてでしたから、大変興味深かったです。その要旨をご紹介します。
シーアイランドコットンは、あらゆる超長繊維綿の源流、バルバデンセ種の中で、最高品質のコットンです。繊維が長い高級綿の中でも、長さが非常に長くて、細く、強いといった優れた特性を持ち、しなやかで滑らか、上品な艶もあって、しかもふっくら柔らかな味わいがあり、昔から「絹のような光沢、カシミアのような肌触り」と形容されてきました。エクアドル近辺が原産地と言われ、カリブ海の島々一帯で栽培されていることから、「カリブの宝石」とも称えられます。
コロンブスが1492年にアメリカ大陸を発見して以来、その存在が知られるようになり、17世紀に台頭した英国により品種改良され、18世紀に米国南西部シーアイランド地方に持ち込まれたことから、シーアイランドコットン(海島綿)の名称が付けられたといいます。これは海沿いの暖かい気候でよく育つ植物で、これに対して、米国でも内陸で生育されるものはアプランドコットン(陸地綿)と呼ばれて区別されます。
20世紀初め、1904年に米国で栽培されていたシーアイランドコットンは、カリブ海地域に逆輸入されることになり、一時期途絶えていた耕作が復活します。以後増産が進みますが、元々虫が付きやすいなど、栽培の難しい品種で、現在でも収穫量は全体の10万分の1程度。その希少性もあって、ブランドが確立され、今に至っているのですが、これには大英帝国が果たした役割が大きかったといいます。1932年になると、英国政府は西印度諸島海島綿協会を創設して、王室御用達のバックアップ体制を整えていきます。フィクションの世界でも、あの007ジェームスボンド氏が愛用者の一人になっています。
日本では、日本支部が1976年に日東紡績により設立され、1980年頃、カリブ海諸国の独立を受けて、協同組合として活動を本格化させます。アンティグア、セントキッツ、ネービス、バルバドス、ジャマイカとユカタン半島沿岸のベリーズの6か国のみが栽培権を持ち、シーアイランドクラブでは、ベリーズに農地を取得、ここ10年ほど、栽培プロジェクトを実施しているとのことです。
日本人の手で産出されたコットンという、トレーサビリティの明確さや、タグを使ったプロモーション戦略が功を奏して、ブランド価値を一層高めているシーアイランドコットン。これからも憧れのコットンであり続けることでしょう。
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