« 「京の七夕」夏の夕べに光の祭典 | トップページ | 「たとえばの話 ― 世界を『外』から満たす日本人の感性」 »

2013年8月13日 (火)

日本の伝統色にみる「彩」への関心

 「日本の色というと、ワビ・サビ(侘び・寂び)枯淡の色と考えられることが多いが、実はその反対の美しい鮮明な色が求められ、尊ばれていたことを忘れてはならない。」と語るのは、染司よしおか五代目当主で美術図書出版「紫紅社」代表、染色家の吉岡幸雄氏。薬師寺、東大寺などの文化財の復元などに携わり、伝統行事の衣裳制作や日本古来の染色技術を守る活動をされています。

 この吉岡氏の講演を、去る7月の円覚寺夏期講座で、拝聴しました。テーマは「日本の伝統色」です。

 お話によると、古の時代から日本人は「彩」に強い関心を示していたとのこと。ちなみに「色彩」の「色」は男女関係というニュアンスが濃く、「彩」は多様な色取りの意で使われてきた言葉。
 日本の伝統色は、この「彩」が中心で、古代人は美しい色に憧れていたといいます。とくに赤は、死者再生を願う色とされ、縄文人はベンガラ朱をつけていたし、卑弥呼の時代は顔に朱丹を塗っていた。仏教が伝来すると、色彩はますます豊かになり、白木だった神社も赤に彩られていきます。 
 古代染めの研究者たちは、当時と同様のやり方で同じ色を出そうと試みるのですが、なかなかその色が出せないそうです。それは同じ植物染めでも、灰汁など助剤を含む材料が違うからで、どうしても深みが出ない。古の人々は最良の原料を集めて染めていたのです。
 たとえば蘇芳は、日本では生育しない植物なので、中国から輸入されていましたし、奈良時代から使われていた肉桂も、大陸からの輸入品です。奈良県にある古墳からは、エジプト原産の紅花の花粉が発見され、コチニール(えんじ虫)や高価なケルメスも幟旗などにたくさん使われていたといいます。
 藍も、インディゴIndigoというように、インド産を意味し、元々日本の藍は、上質なインド藍だったのです。美しい色を追求してやまなかった日本人の探求力には目を見張る思いです。
 日本ではとかくワビ・サビが強調されますが、これは鮮烈な色「彩」があればこその文化だったと、改めて思いました。
 
 今や、染色の99.9%は化学染料使いです。このご講演でも触れられていましたけれど、あえてこの便利を避けるように、忘れられていた植物染めが戻ってきていると感じます。しかしながら、現代は1200年前よりも進歩しているのでしょうか。わからなくなってくる昨今です。

|

« 「京の七夕」夏の夕べに光の祭典 | トップページ | 「たとえばの話 ― 世界を『外』から満たす日本人の感性」 »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 日本の伝統色にみる「彩」への関心:

« 「京の七夕」夏の夕べに光の祭典 | トップページ | 「たとえばの話 ― 世界を『外』から満たす日本人の感性」 »