「メルシー」パリで話題のデスティネーションストア
ファッション業界の関係者なら、パリに行ったら必ず立ち寄るのが、「メルシーMerci」でしょう。ここに行けば、いつも必ず新鮮な発見と驚きがあるからです。
このほど、このメルシーのマーケティングマネージャー、ジャンリュック・コロナ氏とスタイルディレクターのダニエル・ロゼンストローチ氏が来日され、先般開催されたインテリアライフスタイル展で、「バイヤーは語る」をテーマに、ショップの全貌を語るプレゼンテーションが行われました。
「メルシー」は、高級子供服「ボンポワン」の創設者が、パリのマレ地区の北はずれにあった壁紙工場跡地1500㎡を利用し、2009年に、3年がかりでオープンさせた店。今や年間、100万人が来店し、その3分の1は外国人で、年間総売上高は15ミリオンユーロに達するといいます。
店舗は3階建てで、1階はギャラリーのような広いアトリウムになっています。本屋や花屋、香水コーナー、その奥にファッションや生活雑貨があり、2階にインテリアや家具、文房具、そして3か所にカフェ・レストランを備えているライフスタイルショップです。
ショーウインドーはなく、広告は一切していないとのこと。中庭の玄関横に置かれた赤いフィアットが、3週間ごとにチェンジするアトリウムでの打ち出しのシンボルアイコンの役目を果たしているのです。
このアトリウムでは、時代の感性を捉えたストーリー性のあるテーマで、商品がディスプレーされています。ここはまさに新しい情報の発信源。そしてこれを担当しているのが、セリグラフィーチームと呼ばれるバイヤーたちです。彼ら目利きの演出と提案が客の興味を誘うのです。
ここではマーケティングのためのマーケティングはしていないともいいます。ジャンリュック・コロナ氏は、同店をいわゆるコンセプトストアではなく、デスティネーションストア Destination Storeと称されています。デスティネーションストアとは、その店にしかない、しかも絶対に信用できる品が、どこよりも多く、確実に揃っている店という意味です。
そのポリシーをいくつかピックアップしますと---。
1. Authenticity 本物であること。コピーではなく、常に本物志向。
2. Diversity 多様性。様々な種類のものを集積していること。
3. Selective & Eclectic 選び抜かれたもの。大衆品から高級品まで、無名のものから有名ブラントまで、オープンな形で精選したものを置いている。
4. Function 日常使いの実用品。毎日使えるシンブルな日用品に優れたデザイン性があるとし、装飾的なものは扱わず、実験的なデザインもやらない。パッケージせず、商品は裸で見せている。
常設の什器は使わず、キャビネットや棚などは毎回入れ替えているそうです。商品展示はアートのインスタレーションのようなものと考え、バイヤーも一人一人がキュレーターの意識で仕事をされているとも。
同店では利益を貧しい国や恵まれない子供たちのために寄付する仕組み。社会貢献につながる買い物ができることも人気の理由です。
単に売り買いするだけではない、デスティネーションストアという、新しい小売業の姿を垣間見させていただき、ますます「メルシー」が好きになりました。
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