« 「白雪姫と鏡の女王」衣装展 | トップページ | 秋へ水玉も深みを増して »

2012年8月24日 (金)

レーピン展「ブロガー・スペシャルナイト」

 渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催されている「国立トレチャコフ美術館所蔵 レーピン展」で先日「ブロガー・スペシャルナイト」があり、座談会「レーピンの魅力を語る」に参加しました。
 イリヤ・レーピンという写実主義のロシアの画家については、「ヴォルガの船曳き」の絵が高校生の世界史の教科書に載っていたのを思い出したくらい。ましてやこの絵がレーピンの出世作だったなんてことも、ほとんど知りませんでしたから、座談会は大変新鮮で刺激的でした。Cimg78491
 登壇者は美術史家の山下裕二さんとレーピン研究家の籾山昌夫さん、司会はTakこと中村剛士さん。バックミュージックにムソルグスキーの「展覧会の絵」が静かに流れる中、レーピンの傑作「ムソルグスキー」の肖像画を横目に見ながら、1時間のトークはあっという間に過ぎて時間切れ。もっと聞いていたかったです。
 
 興味深い会話の中で、とくに印象に残った部分をまとめてみました。
<山下>レーピンはロシアでは知らない人はいないといわれるほど有名な、国宝級の画家なのに、なぜ日本ではあまり知られていないのでしょう。
<籾山>日本では20世紀以降のロシアン・アヴァンギャルドの作品を見る機会はよくありますが、19世紀ロシアのものは大変少なくて、現在もレーピンの絵は横浜美術館に1点あるのみです。今回の展覧会は本邦初の個展といっていいでしょう。とはいえ大正時代には、トルストイのブームがあって、トルストイの肖像画を多数残しているレーピンは一般にかなり知られた画家だったのです。
 しかし戦後の東西冷戦で、レーピンの絵画作品はソビエト連邦の社会主義のプロパガンダの材料に使われました。
 Cimg78931 左の写真は1950年にソ連でつくられた宣伝ポスターで、右上の画中画はレーピンの「ヴォルガの船曳き」です。レーニンに似たお年寄りが少年に、かつてはこのような苦しい労働を強いられた時代があったことを諭している情景で、レーピンは虐げられた人々を告発する画家にまつりあげられてしまったのです。実際には皇帝や貴族のそば近くに仕えた画家であったにも関わらず、です。
 冷戦に翻弄されたレーピンは、西欧では歪んだ存在として埋没していました。文学ではトルストイやドストエフスキー、音楽ではチャイコフスキーやムルグスキーというように、著名人が輩出していますが、それは美術の世界でも同様で、レーピンのような優れた芸術家がいたのです。しかし美術は、文学や音楽のようにコピーできず、再現が不可能です。レーピンの作品が国外に流通することはほとんどありませんでした。
<山下>レーピンは天才的画力の持ち主。絵がメチャクチャ上手い。構想の練り方や労力のかけ方がすばらしく、絵にドラマを感じます。
B8c3cdc8a39b11501825362048ea40c5_3 <籾山> チラシに採用された「休息―妻ヴェーラ・レーピナの肖像」は、レーピン夫人が眠っている様子が描かれています。しかしX線調査で、当初目は開いていて、後で変更したことがわかり、腕に巻いているのは喪章とみられることから、これは悲しみにくれる妻の姿を映したものと推察されます。事実この後、二人は離婚しています。 
<山下>チラシに、マツコ・デラックスみたいな「皇女ソフィア」を使ったらコワイですね。ピアニスト「ゾフィー・メンターの肖像」は、この画家には珍しく腕が厚塗りされています。上から目線なのがいいですし、「ヒルデンバンド男爵夫人」のような高飛車な感じの女性の絵も好きです。
Cimg78611 <中村>「思いがけなく」の絵で、家の中に突然入ってきた男を迎える家族の驚きの表情が秀逸。6人が描かれていますが、もう一人、心霊写真のように、女の子の上の壁に影のように人が見えるのですが--。
<籾山>「少女アダ」の鉛筆画がいい。鉛筆をぼかした明暗の技に画家の力量を感じます。

 迫力のある絵を見て、私も大感動! 本当に行ってよかったと思った展覧会でした。10月8日まで開催されています。

|

« 「白雪姫と鏡の女王」衣装展 | トップページ | 秋へ水玉も深みを増して »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: レーピン展「ブロガー・スペシャルナイト」:

« 「白雪姫と鏡の女王」衣装展 | トップページ | 秋へ水玉も深みを増して »