2018年2月16日 (金)

ミラノウニカ⑹ 動員大幅増で盛り上がった会期

 第26回ミラノウニカが8日、閉幕し、直後に結果速報のリリースが届きました。 
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 リリースによると、今回は出展社が14%増と大きく増加しただけではなく、このフェアを訪れた企業の総数も、前年2月展比で2.4%増の5,949社に上ったといいます。

 来場社を詳細に見ると、イタリア以外からの外国企業が10.5%と二桁増となっています。その内訳は次の通りです。香港が70%増、ロシアが54.5%増、ドイツ50%増、また米国19.7%増、中国19.6%増、フランス15%増、トルコ12%増。逆に若干少なくなったのが英国と日本で、英国5%減、日本6%減。

 全体に動員数が大幅に増加し、盛り上がりを見せた会期だったとみられています。
 また突如急逝された前会長のシルヴィオ・アルビーニ氏の功績にも報いることができたと、しています。

 次回は7月10日~12日、今回と同じミラノのロー・フィエラ会場にて開催されることになっています。

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2018年2月15日 (木)

ミラノウニカ⑸ 日本パビリオン「継続は力なり」

 ミラノウニカ(MU)の日本パビリオン「ザ・ジャパン・オブザーバトリー」では、レイアウト上、伸び悩んだといった企業もありました。しかしおおむね満足げで、次回も出るというところが大半です。
 とくに長年続けて出展しているメーカーには、「継続は力なり」を感じさせられました。バイヤーを的確につかみ、よい結果を出されていたように思います。

鈴木晒整理
 静岡県浜松市を本拠に、綿中心に衣料用天然繊維製生地の染色整理加工を行っている企業です。
 今回は単独ブースで出展しました。一押しは同社独自の防シワ加工の「クリーズケア」です。昨春発表し、内外で好評を得たといいます。
Img_65711  右の写真のように、綿100%パンツで、加工したものと未加工のものとを比較し、その効果のほどをアピールしていました。着用したときのシワの回復度、防縮性にもすぐれていて、セルロース系繊維にも対応可能といいます。
 この他、涼感加工の「ニュークールマスター」や防汚加工の「ソイルマスター」など、様々な機能加工を開発していて、いずれも素材のよさを活かしたすばらしい風合いで驚嘆させられました。

福田織物
 最高級の綿細番手織物で定評のある遠州産地の織物メーカーです。
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 今回はコレクションを絞って展示し、いずれも好評といいます。継続出展で、受注生地がわかってきたことが大きいようです。
 Img_65631とくに新作として、綿かすり織物を提案。
 これはかすり染めの糸で織った綿100%のチェックです。
 塩縮など表面加工生地などとともに目新しさを添えていました。

吉田染工
 横編みなのに布帛の、それも飛びきりファンシーなジャカード織のような編み地が魅力のブースです。
Img_65591  横編み機は島精機のスライを使用、綿やリネン、化合繊、ラメやモール糸など様々な糸を駆使して編み上げられた重厚感あふれるテキスタイルを揃えていました。
 今回も大きな手ごたえを感じている様子でした。

前田 源 商店
 富士吉田産地でオーガニックコットンの織物を手がけるメーカーです。
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 今回は化学染料を使わない草木染めによる綿100%のオーガニックコットンを展示し、自然の優しさをアピール。
 MUのシーズンテーマがサステイナブルということもあり、来客が多く、人気を集めていました。

八木通商
Img_65781  表面変化のある箔加工など、特殊加工が人気です。
 右は、MUのトレンドエリアに展示された同社の素材で、ハンドメイドでスクラッチしたような二重織の立体感は、まさに日本の匠の技!

大長
Img_67871  滋賀県東近江市が本拠の綿・麻織物を中心とする晒加工および特殊仕上げ加工メーカーです。
 適度なハリコシのあるシボ効果や塩縮加工など、表面変化のある無地が注目されます。

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2018年2月14日 (水)

ミラノウニカ⑷ 日本パビリオン 3社が新規出展

 今回もミラノウニカ(MU)に、日本ファッション・ウィーク推進機構と日本貿易振興機構(JETRO)が運営する、日本パビリオンの「ザ・ジャパン・オブザーバトリー」が出展しました。
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  参加したのは34社・団体で、新規出展は3社です。出展社数は前年2月展に比べやや少なかったのですが、来場者数は昨年以上に多く、各社盛況のうちに終了した模様です。
 MUトレンドエリアには137点ものジャパンクオリティが展示され、日本が誇るイノベーション素材や匠の技が、来場者の目を引き付けていました。

 新規出展の3社をご紹介します。いずれも化合繊を得意とする福井産地の有力メーカーです。 

日装
Img_67741_2  福井市を本拠に刺繍レースなど、カーテン生地が主力のメーカーです。
 MUでは、ラッシェルに刺繍生地を合わせた特殊素材など、自社にしかできないという服地を企画して高品質をアピール。人気を呼んでいました。 

 セーレン
Img_67811jpg_2  インクジェットプリントのビスコテックスによる3D表現による生地や、特殊加工で表面変化をつけた軽量ダブルラッシェル、機能糸と天然素材を融合した、軽くストレッチ性のある肌触りの良い機能素材などをピックアップ。人目を惹いていました。 

 マツミ
Img_67791_2  福井産地のテキスタイル産元商社です。
 アウター向け高密度織物中心に、各種天然・化繊との複合素材やストレッチ織物など、オリジナリティのある織物開発に力を入れているといいます。ヴィンテージ調の加工も注目されます。

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2018年2月13日 (火)

ミラノウニカ⑶ 若手デザイナー育成プロジェクト発信

 ミラノウニカでは、毎回若手デザイナー育成のためのイベント、「バック・トゥ・スクール (Back to School)」と呼ばれるプロジェクトを発信しています。今回はイタリアを代表する世界的なファッションブランド、エルメネジルド・ゼニアのアーティスティック・ディレクター、アレッサンドロ・サルトリ(Alessandro Sartor)氏をゲストに迎え、同氏とファッションエディターのシモーネ・マルケッティ氏による対談形式でセミナーが行われました。
 テーマは、「CRAFTING MODERNITY: (クラフティング・モダニティ)」です。クチュール技術と融合したクールなシルエット、革新的なデザインは、どのようにして生みだされるのか、ピッティで発表された多数のゼニアのコレクションやアトリエでのビジュアルを見ながら語り合われました。
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 大ホールに集まった約1,000人ものイタリアのファッションスクールの学生たちは、同氏の経験にもとづくデザイン哲学に大いに刺激されたようです。質疑応答に入ると次々に手が上がり、活発なやりとりが交わされました。「第一番はクオリティ」が印象的でした。

 またもう一つ、注目されたのが、未来を担うデザイナーのための「アイズ・オン・ミー Eyes on Me」プログラムです。これは新卒の若手デザイナー20名が、独自のトータルなコレクションを展示する企画コーナーで、その個性あふれるスタイルと技量を、新しい才能を求める企業にアピールしていました。
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 このようにミラノウニカは、プロの舞台に上るチャンスを提供しているハイエンドなテキスタイル見本市でもあるのです。イタリアのテキスタイル産業、ホントに奥が深いと感じます。

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2018年2月12日 (月)

ミラノウニカ⑵ トレンドメッセージは「地球を救う」

 2019春夏向けにミラノウニカが発信しているメッセージは「Save The Planet地球を救う」です。

 これを基に、トレンドエリアには、今回初めてサスティナビリティに光を当てたセクションが開設されました。このセクションを中心に、三つのテーマ、「水」、「空気」、「大地」のコーナーが設けられ、各テーマを物語るビデオが上映されるという構成でした。
 またテキスタイルの川上部門のトレンドを提案する「フィーロ(ヤーン)」エリアの新設、さらに製品検索のためのタッチスクリーンの用意など、新しい取り組みが見られたことも銘記しておきます。

 トレンドテーマとヴィジュアルの一部分をご紹介します

「水Acqua」 ジャック・クストーとアトランティスの神秘

 ジャック・クストーは伝説のフランス人海洋探求家です。ここでは深海をモチーフに、深い海底の有機的なネオクラシシズムにフォーカスします。

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「空気Aria」 ヌレエフと北欧の光


 ヌレエフとはルドルフ・ヌレエフのことでソ連生まれのバレエダンサーです。「その魅力は天上の光」のドキュメンタリーにインスパイアされたテーマです。

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「大地 Terra」  マサイと砂丘

 アフリカのマサイ族の文化や、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の映画「ザブリスキー・ポイントの勝利」が発想源。ザブリスキー・ポイントは米国ネバダ州のデスヴァレーの一地点のこと。Area_trend_terra_004_milnounica_pe1
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2018年2月11日 (日)

ミラノウニカ⑴ 次なるファッション・テキスタイルとは何か

 2019年春夏向け素材を発表するイタリアのテキスタイル見本市、第26回ミラノウニカ(MU)が、この6日から8日、フィエラミラノ・ローで開催されました。私も開幕の前日にミラノに到着し、連日会場を巡りました。

 今回出展したのは416社で、昨年2月展に比べ51社増えて14%増という二桁台の増加。これにオッセルヴァトーリオ・ジャッポーネ(日本のパビリオン)34社、オッセルヴァトーリオ・コレア(韓国のパビリオン)20社が参加し、出展社数の合計は470社となりました。来場者の出足も好調で、随所に活気があふれていました。

 初日、恒例のオープニング・セレモニーで、MU会長のエルコレ・ポッド・ポワーラ氏、シンギュラリティ大学教官兼アドバイザーのデヴィッド・オーバン氏、バンカ・セッラ・ホールデイングのピエトロ・セッラ氏、コンフィンドゥストリア・モーダ会長のクラウディオ・マレンツィ氏、経済発展省政務次官のイヴァン・スカルファロット氏が登壇しました。

Cerimonia_018_milanounica_pe19_ph_2  冒頭、衝撃を受けたことが一つありました。それはMU共同創設者で前会長のシルヴィオ・アルビーニ氏が急逝したというお知らせです。アルビーニ氏は国際化の立役者で、MUへの日本企業参加の道を拓いた方です。一同立ち上がり、同氏の業績に拍手、遺影に追悼の意を表しました。 
 
 MUでは今回、全体を流れる大きなテーマとして、「次なるファッション・テキスタイルとは何か?」を掲げています。新しい世代、とくにミレニアル世代が求める新しい市場へ向けて、MUが打ち出した答えは、サスティナビリティからデジタルへ、ファッションテックへの大潮流でした。

 ポワーラ会長をはじめ登壇者たちが各々、このテーマをもとにスピーチしました。

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 サスティナビリティについては、トレンドエリアにエコ・サスティナビリティ証明付き製品コーナーを開設。今シーズンのトレンドテーマ「地球を救う」のスローガンの下、この特別なセクションで、個々の企業の製品づくりへの真摯な取り組みを証したサンプル展示が行われました。サンプル数は53社から250点。ポワーラ会長は、サスティナビリティは今後サバイバルしていくための必須条件になると強調しています。
 デジタルやファッションテックについては、新たなフロンティアを開拓するものであり、MUは未来と取り組む姿勢にさらなる進化を促していく、としています。 
 MUの新たな転換を印象付けられた開幕式でした。

 なおコンフィンドゥストリア・モーダ会長のクラウディオ・マレンツィ氏から、イタリアテキスタイル産業における2017年の実績が披露されたことも付け加えておきます。
 イタリアのテキスタイル産業の売上高は1.3%増、貿易黒字額も0.4%増と好調で、イタリア製服地の輸出先では第一位が中国、二位はドイツだったのこと。雇用も2年連続で安定しているといいます。
 とくに注目は、テキスタイル部門の黒字額です。テキスタイル/ファッション産業の売上高は総売上高の15%程度。それにも関わらず、テキスタイル部門の黒字は貿易黒字全体の25.4%にも達しているのです。イタリア製テキスタイルの成長が、イタリア経済に大きく貢献していることがわかります。

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2018年2月10日 (土)

ギフト・ショー春 ライフ×デザイン ⑵ 注目の商品

(昨日のブログの続きです)
 ギフト・ショー春2018  ライフ×デザイン展に出展していたたくさんのブースの中から、
とくに注目した商品を、2つご紹介します。 

キャリーサカサ Carry saKASA
 これは傘ですが、普通の傘ではない、逆折傘。台湾を中心とするアジア貿易を軸にビジネスを展開しているインタービジネスブリッジが手がけるブランドです。以前、仲間の一人が持っていて、アイディアがあると感心した覚えがありました。
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 逆向きに開くので、閉じたときに手が濡れません。自分も濡れないし、他人も濡らすことがないので安心です。立てかけなくても自立して立ってくれます。手を放しても倒れません。
干すときも場所をとりません。また狭いすき間から開閉できるので、車の乗降も楽にできるのです。
 一本持っていたら重宝しそうです。

和泉木綿
 和泉木綿はその名の通り、大阪・泉州で江戸の昔から織られてきた綿織物です。ところが安価な輸入綿に押されて明治時代後半には姿を消してしまったのですね。この幻の地場産品”を蘇らせたのが、平山繊維です。白木綿(登録商標和泉木綿)の素材に、注染本染の染技法を駆使した製品を企画製造販売しています。
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Img_56391jpg  ブースでは、よりモダンな新商品を多数提案していました。シャツなどのアパレルからストール、インテリア雑貨まで、ダブルガーゼの肌触りのよさが魅力です。
 職人の技術がこんなところにも生きています。

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2018年2月 9日 (金)

ギフト・ショー春 ライフ×デザイン⑴ ニッポンモノイチ

 第85回ギフト・ショー2018 ライフ×デザインLIFE×DESIGN展が、1月31日から2月3日、東京ビッグサイトで開催されました。「暮らし デザイン 新時代」をテーマに935社が出展。
 中小企業を支援している中小機構の地域の活性化・ブランド化を推進するプロジェクト「ニッポンモノイチ」も出展していました。セミナーも行われ、中小企業基盤整備機構の阪本 洋氏をモデレーターに、ワールドフォトプレスの坪井 一雄氏とスカイモーションの杉原 広宣氏がパネリストとして登壇、「“気づき”があれば商品力が上がる!~商品開発プロセスストーリー~」をテーマに、このプロジェクトに参加した6社の商品開発プロセスが語り合われました。

 新商品開発で重要なことは、①本質に立ち返ること、②お客様視点に立つこと、の二つ。魅力を「見つけて」、魅力を引き出す「気づき」、方向性を決定して言葉で客に「伝える」ことがポイントと指摘します。
 とくにキャッチフレーズは、商品開発を進める重要要素。「商品の特徴」と「企業メッセージ」を表現するコピーを考えることが鍵になると強調していたのが印象的でした。

「つむぐ、いとやのタオル」 旭紡績 (大阪府泉南市)
 創業150年の綿紡績会社で、糸屋がつくるタオルブランド「糸屋のタオル」で市場に参入。
 Img_56441しかしお客様の視点に気付いたことで、「つむぐ、いとやのタオル」のコピーに変更。この言葉により商品開発が進んだといいます。
 色は白/黒の二色コントラストでモダンにディスプレーし、イメージアップ。黒は京都紋付とのコラボによる漆黒染めで差別化したといいます。

「あたたかさ 春夏秋冬 くらしきぬ」 クラビズ (岡山県倉敷市)
Img_56481jpg  シルクを使ったインナーを展開している企画会社です。
 「シルクは温かい」という原点に返り、「冷えとり」効果のある「腹ぱん」や「靴下」といったアイテムを提案。
 「春夏秋冬」の言葉を入れて、一年中あたたかいことを伝えるキャッチコピーで、販売を伸ばしているといいます。

「宮島のこころとかたち」 博多商店 (広島県廿日市市)
Img_56541  明治初期創業のもみじ饅頭の老舗です。店主が建築家ということから手作りの高級杓子を開発、「宮島杓子(BIWA)」を製造販売しています。
 全体を俯瞰してみることでやりたいことの整理がついたそう。コピーには、宮島をもっと知って欲しいとの思いが込められています。

「萩は和の色COCON」 萩陶苑 (山口県萩市)
Img_56511  萩焼でこの色は見たことがありません。
 でもこれこそ萩焼が誕生した当時の土の色だそうです。
 萩焼の本来の色こそ、実は新しいことに気づかれたとか。「和の色」というコピーが効いています。

「桐のあぐら椅子」 増田桐箱店 (福岡県古賀市)
Img_56551  桐箱には日本の文化があり、それを広めたいという強い熱意に気付きたそう。
 軽く安定性のいい玄関椅子を桐箱でつくって提案。あぐらがかけることから、「あぐら椅子」と名付けたといいます。

「V-TISS」 トーマ (奈良県大和高田市)
 家具づくりで90年の歴史ある老舗です。
 仕上がりの美しい、組み立て簡単な「Vカット工法」を発明した会社でもあります。この本来得意としていた技術を活かし、ユニット型のボックス家具をデザイン、ブランド成功に導いたといいます。

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2018年2月 8日 (木)

BFGU“ファッションとAI”―人間性とデジタルの共生

 第10回目を迎えたBFGU(文化ファッション大学院大学)ファッションウィークで、1月30日、シンポジウムが開催されました。テーマは「“ファッションとAI(人工知能)”―人間性とデジタルの共生」です。
Img_56281jpg  パネリストは、日本アイ・ビー・エム シニアマネージングコンサルタント GBS 事業本部 コグニティブ推進室の岡田明氏、YUIMA NAKAZATOブランドを手がけるデザイナーでアーティストの中里唯馬氏、文化ファッション大学院大学 ファッションクリエイション専攻 教授の吉田康成氏で、モデレーターとして日本放送協会 情報システム局 副部長小川徹氏が参加しました。

 口火を切ったのは、ファッションをライフワークとしているという小川氏です。最近のテクノロジーの変化に着目し、これまではワーキング・ウイズ・マシーンだったのが、これからはメイキング・ウイズ・マシーンとなり、ファッションの世界に一気にAIが入ってくるといいます。AIと人間がコラボしてアートを創る時代が来ているとし、とくに「AIとクリエイティブ」に絞って語り合いたいと提案しました。

 最新のテクノロジーとクラフトマンシップの融合で注目のデザイナー、中里氏は、終了したばかりの今春夏パリ・オートクチュールコレクションの新作について、次のように語りました。
 それは縫製がほとんどされていない、パズルのような組み立て式の服で、小さいパーツを組み合わせ、つなぎ合わせて仕立てられています。縫製しないメリットは、瞬時に組み換えが利く、サイズや形の変更はパーツの交換で可能、キモノのように一部調整するだけで代々着用できることなど。パーツは一つひとつ形が異なっていて、着る人独自の番号がふってあり、もしも壊れたらその部分だけ取り替えて修理できるそう。
 今シーズンは「宇宙」がテーマで、宇宙空間で長く着続けられる一着をJAXAとコラボレーションしてつくったといいます。首都高で使われなくなった横断幕をカットするなど、リサイクル素材も使用したとか。
 また服づくりの工程がすべて詰まっている移動式テーブルを発明。この机一つあればパターン作成・裁断などの作業が、AIの機能により自動的に最適化される仕組みで、データ入力などカスタマイズの時短につながるそうです。
 オートクチュールの民主化に向けて、いよいよ動き出したといった感じですね。

 岡田氏は、AIの進化について、IBMのAIワトソンとトミー・フィルフィガーとのコラボなどから、ある程度のクリエイティビティのパターン化はできるようになってきたといいます。しかしデザイナーの心中、思いまではコピーできないとも。
 提示はできても、決めるのはやはり人間といいます。

 吉田氏は、教育者としての立場から、AIの役割は、学生の創造力を引き出す手助けをするカウンセラー、といいます。AIと対話することで、先入観が壊れ、思いがけない気づきが与えられる、そこから新しいアイディアが生まれることを期待しているなどと語りました。

 これを受けて中里氏は、AIが出す最適解が果たして正解なのか、必ずしもそうとは限らないのではないか、といいます。確かに非合理的なものの方がよいということもあります。最適解を見つけるためにAIを利用してもよいとは思うけれど、デザイナーはその先をつくっていかないといけない。だからAIは現状、デザイナーのクリエーションのサポート役にはなれない、と。
 とはいえ、最後にAIの使い方について、次のように話したことが印象的でした。
 ―オートクチュールは客との対話が大事です。たくさんの人とコミュニケーションして、その人に合う一点ものを届けたいと思っているのに、それができない。だからデザイナーの代わりにAIがより多くの顧客とコミュニケーションしてくれるようになるといいと思うのです。―

 ファッションという人間の感性が問われる分野で、AIがどれだけ関われるのか、その可能性を探る、大変興味深いシンポジウムでした。

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2018年2月 7日 (水)

「パリジェンヌ展」アートとオートクチュールの緊密な関係

 今、世田谷美術館で「パリジェンヌ展 時代を映す女性たち」が開催されています。パリジェンヌとはパリに生きる女性です。ここではとくに18世紀から20世紀のパリを体現する女性たちにスポットがあてられていて、展示されているのは、ボストン美術館所蔵の作品、約120点です。
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 先日、関連イベントのレクチャーがあり、まだ雪が残る砧公園内に立置する世田谷美術館に行ってきました。
 講師は京都服飾文化研究財団理事、名誉キュレーターの深井晃子氏です。「アートとオートクチュールの緊密な関係-アメリカ女性とパリジェンヌ」をテーマに、絵画から見たパリモードとアメリカ女性との関わりなどについて語られました。

 深井氏によれば、「パリジェンヌ」とは何かというと、定義はない。けれどこの言葉が重要な意味を持つようになってくるのは、19世紀の半ば頃からで、オスマン男爵によるパリの都市改造計画でモダン・パリが出現して以降といいます。
 オートクチュールが創始され、また大西洋横断航路の定期サービスも開始されるようになり、米国人実業家たちが夫人を伴いパリに来て、美術品を収集するようになったのもこの時代でした。ボストン美術館の収蔵品も彼らコレクターのコレクションを集めたものといいます。ボストン美術館に印象派の作品が多い理由がわかります。
 印象派の画家たちは、パリジェンヌの肖像画をたくさん描いています。つまり当時のアート作品からその頃の流行が類推できるわけです。

 講演では、パリジェンヌとパリモードを読み解く鍵となる絵画が多数紹介されました。
9f3307674f1327e35e0a579d21e66940   たとえば本展のポスターにも掲載されているマネの大作「街の歌い手」(1862年頃)です。ギターを抱えたこの歌手は、流行のカシミアショールを身に着けていません。カシミアショールは庶民にはあまりにも高価で贅沢なものだったのですね。もちろんオートクチュールのモードでもありません。でも彼女は最新流行の衣装を装っています。この絵は、既製服が登場して、服の民主化が進行し、誰もがその気になれば流行のファッションを着用できるようになったことを表わしているといいます。

Im_parisienne201706_03_2  またもう一つ、ポスターに取り上げられているのが「チャールズ・E・インチズ夫人」(1887年)という、ジョン・シンガー・サージェントの作品です。この実業家夫人はボストン社交界の美女といわれた女性だそうです。もうパリジェンヌになりきったといった姿で描かれています。
 アメリカ女性にとって、パリモードはまさに憧れの的だったことを示すような作品ですね。
 他にもルノワールやドガらが描いたモデルやミューズのお話があり、改めてパリジェンヌとはどのような女性を指していうのか、知り得た気がしました。

 展覧会では18世紀のエレガンスから19世紀、20世紀のモダンシーンまで、美しいパリジェンヌたちを描いた作品が数多く展示されています。 
 これらの作品に見るパリジェンヌひとり一人の生き方を、探ってみるのも楽しいですね。今を生きるヒントが見つかるかも、と思います。
 なお開催は4月1日までです。

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2018年2月 6日 (火)

「ロボデックス」展 Tシャツ折り畳み機が話題に

 ロボット総合展「ロボデックス」が、このブログで昨日まで掲載していたウェアラブルEXPOと同時開催されていました。
 約300社の最先端ロボットか展示される中、繊維関連で話題を集めていたのが、クラボウのTシャツ折り畳み機です。
 大きなアームが白いTシャツを持ち上げて、ゆっくりとした動きで上手に畳んでいく様子が実演され、来場者の注目の的になっていました。(動画をご覧ください。)


 ロボットの手は、こんなに柔らかいものにまで及んでいるのですね。
  今後、縫製工場などで利用されていくことでしょう。

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2018年2月 5日 (月)

ウェアラブルEXPO ⑵  注目の新技術

 (昨日のブログの続きです)
 今回の第4回ウェアラブルEXPOでは、新たな技術に目が向きました。そのいくつかをご紹介します。

東洋紡 TOYOBO
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Img_55261_2  「ココミ COCOMI」のスマートウェア(上写真)の展示に引き寄せられて、中に入ると、目に付いたのが妊婦さん用の下着です。これは東北大学東北メディカル・メガバンクが取り組む“産後鬱(うつ)”研究向けに、ユニオンツールの心拍センサーと「ココミ」を使用したスマートテキスタイルで、綿杢ニット使い。
 生体情報の活用シーンが、様々なウェアに広がっていますね。

島精機 SHIMA SEIKI
Img_54921_3   無縫製横編ホールガーメント機の世界企業が初出展し、旭化成のウェアラブルデバイス「ロボ電」を組み込んだニットウェアを発表していました。
 ロボ電(このブログ2017.11.23付け参照)は、伸縮性を有する電線です。チューブ状の電線内に冷水を通すと、夏は涼しく、また温水なら温かいウェアとして着用できるアイディアです。

クラボウ KURABO

Img_55291  新製品「スマートフィット」を提案。取得した生体情報を解析し、リアルタイムで現場作業者の熱中症などのリスクを評価するシステムです。
 その実演も行われていました。


帝人フロンティア TEIJIN FRONTIER

Img_55371  関西大学とのコラボによる「圧電刺繍(e-stitch)」を開発。これは昨年このブログ2017.1.26付けで紹介した圧電組紐を応用したものです。様々な刺繍パターンを解析し、ファッション性を兼ね備えたウェアラブルセンサーを実現させたものとか。
 ブースでは圧電刺繍を施した見守りペットウェアや圧電インソールなどのアイテムも紹介していました。

ミツフジ MITSUFUJI
Img_55181  心拍数などの生体情報をスマホで手軽にモニタリングできるアプリを開発。
 介護・福祉問題の解決に、離れて暮らす家族の「見守り」サービスを実現しています。インナーはソフトな感触の導電不織布です。

シンド―  SHINDO
Img_55541  機能性副資材、イー・ストレッチ(e-stretch)を開発。
 右の頭に巻いた鉢巻きがそれで、よく伸びる導電性ストレッチテープで、ソフトで肌当たりがよく快適といいます。

 

ヴォルトスマートヤーンズ VOLT SMART YARNS
Img_55321jpg_2  銅など金属を使った導電性の糸を紹介。
 この糸使いの織物によるかっちりとしたウェアも見せていました。




イスコ ISKO

Img_55561_2  導電素材によるデニム素材を開発。スマホと連動し、温熱効果を体験する実演が行われていて、私も試してみました。確かに温かい!

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2018年2月 4日 (日)

ウェアラブルEXPO ⑴ 特別講演「ARとウェアラブル」

 ウェアラブル端末の活用と技術の専門展、「ウェアラブルEXPO」が、1月17日~19日東京ビッグサイトで開催されました。Img_54851出展企業は163社、来場者は14,751人を数えたといい、連日大にぎわいの盛況でした。

 セミナーも多数行われ、私は初日の特別講演「AR/VRがウェアラブルにもたらす革新」に参加しました。

 最初に登壇したのが東京大学大学院情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻教授 廣瀬 通孝氏です。「ARとウェアラブル」をテーマに語られました。ウェアラブルコンピュータの基本的特徴と、この技術の最近の話題や将来の展開について、私のような素人にもわかりやすい講義で、印象に残る講演会でした。下記に簡単にまとめてみます。

 まずはウェアラブルコンピュータについて。20年前に携帯ブームがあり、そこからPCが持ち運べるものとなり、どんどん小型化したことにより使い方が変化し、ウェアラブルの概念が生まれました。その特徴は個人と適合しているインティメイトなものであること。だから入れ歯やメガネが貸し借りできないのと同様に、ウェアラブルPCはシェアできないものであるといいます。
 これがARと結びつくとどうなるのでしょう。ヒューマンインターフェースでは今、大革命が起こっているといいます。これまでは機械が人間に歩み寄っていたのが、ウェアラブルにより人間を機械に近づける方向へシフトしている、これはサイボーグの哲学であるとも。
 実際、AR技術の普及で、機械によって拡張された人間が出現するようになってきているといいます。この拡張デバイスをしのばせて、様々なことができるのがウェアラブルPCであると、解説されました。
 次にその特性でとくに重要な体験記録についてです。自分が何をしたのかという記録ですね。これは記憶の拡張に進み、過去の出来事がわかるようになります。過去がわかると未来も予測でき、賢く生活できるようになってくるというのです。
 この技術は既に高速道路の渋滞解消など、随所に採り入れられ始めていて、テレビ番組で人気のブラタモリでも、何の変哲もない場所のかつての様子を見せてくれるなどしています。博物館でも利用されて、失われた原風景を蘇らせるなど、来場者を楽しませています。
 ウェアラブルPCにより時間軸を遡る体験ができるようになったのです。これは考えてみるとほんとうにおもしろいと思いました。「覆水盆に返らず」ではなく「覆水盆に返る」ことが可能になってきたのです。
 最後にウェアラブルPCは今後不可欠な要素となっていく、そしてその成否は超分散システム→自律分散システムの設計にかかっているなどと述べられ、時間切れとなりました。
 今まさに新しい産業構造が生まれている、私たちはその大転換の時代を生きているのですね。

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2018年2月 3日 (土)

第44回モード・イン・フランス展 「ラベル」ゾーン新設

 第44回モード・イン・フランス展が、1月10日から12日、ベルサール渋谷ファーストで開催されました。結果報告によると70ブランドが出展、1,500名が来場し、昨年同期と比べると横バイでした。とはいえ百貨店からの来場者数が大きく伸びたといいます。

 とくに今回、目玉となったのが、新設の「ラベル(Labels)」ゾーンです。7社が出展し、出展料の優遇もあるとか。抜擢の基準は次のようです。創造性、熟練の技術、受け継がれるものづくりの遺産、そしてメイド・イン・フランス(フランス製であること)。

 今年は日仏友好160周年記念年です。また来年の経済連携協定(EPA)発効へ向けて動き出す年でもあり、出展各社の日本市場への期待は大きい様子です。会場では随所で活発な商談風景を見ることができました。

 初の試み「ラベル」ゾーンで、取材したブランドをご紹介します。

リュー・ベガン RUE BEGAN
 200 年以上の昔より数多くの縫製工場が集まるフランス北部トロワでハイブランドのクリエーションを支えてきたアトリエ・ダリアーヌが、 2017 年にスタートさせた自社オリジナルブランドです。Img_54281その歴史あるストリートの名前をブランド名にしたそうです。
 今シーズンは、ウインタースポーツのメッカ、「雪山リゾート」をテーマに、マウンテンスポーツをイメージさせるプリントのアノラックや、刺繍使いのジャージートップなど。都会的でクールなメンズ、ユニセックスファッションを展開しています。

ヴィトス1925 VITOS 1925
同様にトロワで、1925年にスタートしたストッキングと靴下工場を起源とするブランドです。Img_54471ストッキングの伝線を修繕する画期的な機械を発明し、この機械をVITOSと名付けたことから、世界中にこの名が知れ渡ったとか。
 その後、五代目が得意のニットを中心にブランドを蘇らせ、大人の女性に向けたウェアを提案しているといいます。ナチュラル志向をコンセプトに、素材は環境配慮のリサイクルカシミア糸使いなど。レトロと最新トレンドを融合した個性的で、しかも長く着続けられるコレクションです。

キャロリーナ・リッツラー CAROLINA RITZLER
  ブランドを象徴するのが、オールインワンのコンビネゾンです。Img_54301 元々男性の作業着ですが、その概念を覆し、成熟した女性のセンシュアリティーを表現するアイテムとしてデザインしています。もちろんコンビネゾンの他にも、ケープやトレンチコート、ワンピース、スーツなど様々なアイテムを揃え、充実したコレクションを展開しています。
 アトリエはパリ10区にあり、有名メゾンのコレクションも手掛けるなど、クオリティはお墨付きとか。多くのセレブリティー、ペネロペ・クルスやグレイス・ジョーンズ、ローラ・スメも愛用しているそうです。

ヴァランティーヌ・ゴティエ VALENTINE GAUTHIER
  デザイナーの名前を付けたブランドです。Img_54351jpg 2007年にブランドを設立し、2009年にパリのマレ地区にショップをオープン。今年、パリのボーマルシェ大通りに新たなショールームとフラッグシップショップを開店予定とか。女性的なスタイルに男性的な素材の組み合わせなど、都会的でモダンなコレクションを展開しています。

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2018年2月 2日 (金)

シンポジウム「FBの未来に欠かせないエシカル精神とは」

 最近、SDGs(エスディージーズ Sustainable Development Goals)という言葉を耳にするようになりました。これは国連で2015年に取り上げられた持続可能な開発目標です。これを踏まえて、ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション(略称WEF)主催のシンポジウムが、昨年12月12日、東京・青山で開催されました。
Img_52272jpg  主題は「FBの未来に欠かせないエシカル精神とは-サステイナビリティ志向の思いやりと透明性-」です。関心の高いトピックであるだけに、会場は満席で、熱気がこもっていました。 

 冒頭、WEF会長の尾原蓉子氏が、「消費者意識が変化し、テクノロジーの進展とともに流通・販売も変容、企業の社会的役割も変換し、社会的責任を果たすことが要請されるようになってきました。本シンポジウムがこの問題の解決につながることを期待しています」と挨拶。

 第一部基調講演では、3人の講師が登壇。まず慶應義塾大学大学院教授 蟹江憲史氏が、「SDGsが地球と人間にもたらす変革」をテーマに講演しました。
 SDGsについて、国連で全ての国、米国や北朝鮮も含む国々が合意した文書で、企業の良心に基づく行動への要請であり、法的義務はないこと。貧困や格差をなくし、地球温暖化を食い止めることなど17の分野で、2030年までの達成を目指す行動指針が採択されていることなどを説明。
 その背景やプロセス、様々なアプローチを実例とともに語られました。これによると日本は北欧などに比べると遅れているようです。とはいえ一部で推進の動きがあると、地方創生に向けた自治体SDGsの取り組み、例えば北海道下川町のバイオマス産業都市や沖縄の読谷村、また先進的な企業の例も紹介。ただしまだ本質に迫るところは希少なので、今後は本質に則った事例をつくることが課題といいます。
 このためにはSDGsの本質を社会の変革と捉え、フォアキャスティングではなく、未来から発想するバックキャスティングで行うことが重要であり、矛盾のない未来をつくることがポイントと強調しました。
 次にパタゴニア日本支社支社長 辻井隆行氏が「多様な価値観が創るこれからの社会」と題して、同社の環境ビジネスを、フェアトレード、自然環境保護、環境再生事業、カーボン・ニュートラルなどを軸に解説。リスクを認識して、先行すべきと述べ、SDGsを先にやる企業に先行者利益がある、と指摘。
 さらにオーガニックコットン事業の草分けであり、社会企業家でもあるアバンティ代表取締役社長 渡邊千惠子氏が登場。同社の理念などを語った後、とくに新鮮に思えたのが同社ブランド「プリスティン」のリサイクル、「リプリプロジェクト」のお話。これはお気に入りの一枚を、染め替えたり刺繍をしたりなどして、新たな光を当て、再び使用できるようにする事業。
 また国産綿プロジェクトに触れ、国内綿花自給率をプラスの方向へもっていくと力強く発言、風力発電による「風が作る繊維プロジェクト始動」にも言及しました。

 第二部は、ファッション・ジャーナリストでWEF理事の生駒芳子氏をコーディネーターに、上記3人とのパネルディスカッションとなりました。
 エコやエシカル、サステイナビリティはビジネスを停滞させるのではないか、という質問に、これは逆にビジネスの強力なストーリーになると主張。三者三様に、「先にやる方がお得」、「エシカルはもうカル」などと力説しました。

 最後にファッション業界へのメッセージとして、SDGs はビジネスのリスクではなく、「リスト」であると断言。「2030年にどのようなビジネスが成立しているか、想像力を駆使してみて。未来はもう決まっている」との締めくくりのフレーズが印象的でした。

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2018年2月 1日 (木)

「イッセイさんはどこから来たの? 三宅一生の人と仕事」

 昨年12月、三宅一生氏と交流の深いクリエイティブディレクターの小池一子さんによる著書「イッセイさんはどこから来たの? 三宅一生の人と仕事」の発売記念トークイベントが、青山ブックセンター本店で行われました。
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 出演は、著者の小池一子氏、企画を手がけた三宅デザイン事務所代表の北村みどり氏、装丁を担当されたアートディレクターの浅葉克己氏で、制作までの貴重なお話を聞かせていただきました。

31kcvenybl_sx386_bo1204203200__2  本書は、2016年2月にタッシェンより発売された書籍「Issey Miyake 三宅一生」(北村みどり企画・責任編集)に収録された小池一子氏のエッセイ8章に、書き下ろしの第9章を加え、新たな読み物としてまとめた単行本です。各章の扉絵には、横尾忠則氏によるイッセイミヤケのパリコレ招待状の中から厳選した30点が掲載されています。

 トークでは、三人三様、三宅一生氏と繋がっているからこその知られざるエピソードがあふれていました。
 まずは三宅一生氏との初めての出会いから。小池氏は、多摩美の学生だった一生さんを田中一光氏に紹介されたことが始まりだそう。浅葉氏は80年代初め頃、広告制作プロダクションで知り合ったとか。北村氏は、三宅一生氏が日本で本格的に服作りを始めた頃、東洋系モデルを探していたことから、スカウトされたことが最初だったといいます。
 その後北村氏は、一生さんの腹心となり「アーヴィング・ペンと三宅一生」などの展覧会を始め、様々なショーやイベントを手がけていきます。横尾忠則氏デザインのパリコレのインヴィテーション制作の裏話や、「オム・プリッセ・イッセイ・ミヤケ」ブランドの秘話などを、楽しく語られました。

 書籍のユニークな仮名文字のタイトルについても話が出ました。小池氏は「一生さんと話していると、不思議な気持ちになって、この人どこからきたの?」といつも思うそうです。一生さんがスーパーコンピューター誕生と同年に生まれたことから、「宇宙から来た人としか思えない」と話されていたことも印象的です。
 またタッシェンから本が出版された後、2016年に国立新美術館で「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」が開催されました。このときの開幕パーティに、フランス大統領の使者としてジャック・ラング氏が来日し、なんと三宅一生氏にフランス政府から芸術文化勲章のレジオン・ドヌール勲章コマンドゥールが授与されたのです。小池氏は三宅氏の仕事がフランスで大きく評価されていること、同時に人とのつながりや友情に感動したと振り返っていました。ほんとうにすばらしい出来事で、一生さんは本当にもしかしたら宇宙人かもしれませんね。

Img_52371  本の裏表紙には、浅葉さんによる「一」の文字があります。「一」は一生氏と小池一子氏を表しているのですね。

 私も読んでみて、三宅一生氏のバイブル本になること間違いないと思いました。

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2018年1月31日 (水)

ジャパン・ベストニット・セレクション2017 ⑵ 注目企業

 (昨日のブログの続きです)
 先般の「ジャパン・ベストニット・セレクション(略してJBKS)2017」で、注目した企業の製品をいくつかご紹介します。

<ニット企業>
徳島ニットファクトリー
 徳島県三好郡みよし町が本拠のニットメーカーで、 創業より27年、国産にこだわってレディース、Img_49961jpgメンズ、スクールユニフォームまで幅広いニット製品を生産しているといいます。
 今シーズンは島精機のホールガーメント編機を使用した、高級感あふれるニットを多数提案。
 右は、洗練されたモール糸使いのセーターです。

<カットソー企業>

バーンズファクトリー BURNS & FACTORY
 カットソーなのに、テーラードな布帛感覚のメンズスーツImg_50101やコートは、着心地よさそうなリバーシブル仕立てです。素材はウール100のダブルフェイス。
 洗練されたクラシックなエレガント感あふれるコレクションです。

チャージ CHARGE
 大阪・枚方市が本拠で、カットソーをメインにテキスタイルの企画・製造を手掛けるメーカーです。
Img_50241 ブースでは「パウダースノー カシミール」と名付けた綿素材に目が行きました。これはスーピマ綿の極細糸を使用した綿100%で、「カシミアを超える綿100%」と謳っています。フワッフワッと優しい感触で、生地は薄いのですが、三層構造になっていて温かいといいます。

中半産業
Img_49601  東京・墨田区が本拠で秋田に自社工場を持つ、カットソー・メーカーです。高品質なメンズカジュアルを提案していて、縫製仕上げが美しい!
 シャツは布帛そっくりの上質さです。

三恵メリヤス
Img_50041jpg  日本一の繊維産地、大阪を本拠地に高品質なカットソーブランド「EIJI」を発信しています。
 ここでは世界最高峰のオーガニックコットン、アルティメイトピマを100%使用したEIJIのオリジナルTシャツをアピールしていたのが印象的です。

大石メリヤス
Img_49691  「スラウチ&シック」をテーマに、高級感のあるバスローブとルームウェアを展開。
タオル地のアイテムに人気が集まっている様子です。


<生地関連>
吉田染工 
 本拠地は和歌山県紀の川市で、昨年7月に開催されたミラノウニカに出展し、人気を集めていたメーカーです。島精機の横編み機を用いて、ラメ糸を使ったり、カシミアやシルクを採り入れたり、アート感覚なジャカード織のような魅力的なニット生地を提案しています。
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2018年1月30日 (火)

ジャパン・ベストニット・セレクション2017 ⑴ アワード

 「ジャパン・ベストニット・セレクション(略してJBKS)2017」が、12月6日~7日、東京国際フォーラムで開催されました。
 今回は第10回目となる節目の年で、出展社数は過去最多の75社となり、新販路開拓に動くメーカーが目立ったといいます。また来場者も、史上最高の3,878人を数えたと報告されています。
 総じてビジネス環境が良くなっている様子が伺えました。「国産ニット、ここにあり」です。
 Img_49811jpgとくに島精機の無縫製ニット、ホールガーメントの進化が注目され、導入するメーカーが増えています。
 右はホールガーメント機によるコットン製品です。

 全体がレベルアップする中、恒例のアワードが発表されました。
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 グランプリ及び経済産業大臣賞を受賞したのは、山形市を本拠地とするケンランドです。
Img_50481jpg 同社はリネンを中心とした麻製品を企画生産し販売しているメーカーで、リネンはフランスのノルマンディ産だそう。フランスの農業団体からの支援も大きいとか。
 同社のモノづくりのテーマは、「生命の樹」で、これはノルマンディ地方にあるバイユーのタピスリーに見られる模様をヒントにしているといいます。このタピスリーはリネン地に刺繍を施したもので、私もかつて訪れたことがあり、当時が思い出されました。

 準グランプリは二社あります。
Img_50631  一つは東京・墨田区の中橋莫大小で、「メリッパmerippa」を打ち出しています。
 これは5年がかりで開発したという「メリヤスのスリッパ」で、今では日本以上に欧米向けに好評だそう。このブログ2016.12.25付けでもご紹介していますので、ご参照ください。
 同社はもちろんこのメリッパの他、様々なニット製品を展開していることもお忘れなく。

 もう一つがウメダニットです。
Img_50441  新潟県五泉市にあるニットメーカーで、完成度の高い高品質なつくりが自慢です。ホールガーメント機を使用した製品は、ニットとはいえ、しっかりとしていて布帛感覚。素材から一貫生産し、カットソーと横編みが半々、フルアイテムのラインナップを実現させている点も評価されました。

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2018年1月29日 (月)

歌川国貞展 ~錦絵に見る江戸の粋な仲間たち~

 「歌川国貞展 ~錦絵に見る江戸の粋な仲間たち」が今、静嘉堂文庫美術館で開催されています。
O0393055614116026541  実は歌川国貞という浮世絵師について、私はまったく知識がありませんでした。先日、この内覧会に参加し、太田記念美術館の主席学芸員日野原健司氏や静嘉堂文庫の主任秘書成澤麻子氏、ナビゲーターの青い日記帳Tak氏によるトークショーでお話しを伺い、ほんの少しだけ国貞通になった気がしました。

 歌川国貞(1786-1864)は、美人画と役者絵の第一人者で、後年三代歌川豊国と称した人物です。常に第一線で活躍し、活動期間も50年と長く、作品数は1万点以上にも上るとか。錦絵版画をもっとも多くつくった絵師だったといいます。その点数があまりにも多いことから、それがかえって価値を低めたのではないかともいわれているようです。

 本展では、この名手の作品の中から、活き活きとした江戸の女性たちや、迫力のある役者の舞台姿を描いた錦絵を中心に、肉筆画や工芸品を含む91点を展示。またポーラ化粧美術館の所蔵品も参考出品されています。
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 江戸の多色摺り木版画の錦絵は、写真の無い時代のファッション画です。展示品は、岩崎家のお嬢様たちが着物の柄や髪飾りなど当時の流行を知る参考のため、収集したものだそうです。きちんと画帖仕立てにされているので、展示に苦労したとのことでした。でもそれだけに美しい色が保存されていて、着物文化がリアルに伝わってきます。
 花魁たちだけではなく、市井の普通の女性たちの日常のワンシーンを捉えた描写も多く、150年前の江戸の空気感を感じました。

Img_56161  上は「今風化粧鏡」。こういうのを大首絵というのですね。
 左手前の女性は、口の周りを黒くしてしまったところ。鉄漿を付けるのに失敗した場面です。

Img_55821jpg  真ん中の絵は「蚊やき」です。寝間着姿の女性が、蚊帳の中に入ってしまった蚊を、紙燭の火で焼いている図。 よく見ると小さな蚊が描かれている、おもしろいシーンです。

Img_55901_2  右は役者大首絵として有名な五代目松本幸四郎の「仁木弾正左衛門直則」。

 反った大きな鼻が印象的です。

Img_55951jpg  江戸の劇場の様子がわかる「芝居町 新吉原 風俗絵鑑」。絹本着色の肉筆画です。

Img_56061jpg  「双筆五十三次」です。双筆というのは、二人の絵師による合作で、本シリーズは東海道五十三次の宿ごとに、前景の人物を歌川国貞こと三代歌川豊国が、背景の風景画を歌川広重が担当して、刊行されたもの。

 この他、紹介しきれませんので、どうぞ会場まで。URL http://www.seikado.or.jp/
 会期は前期 1/20~2/25、後期 2/27~3/25となっています。
 なお写真撮影は、美術館より特別の許可をいただきました。

 

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2018年1月28日 (日)

軍服の歴史 「紳士服のルーツは軍服だった」

 「紳士服のルーツは軍服だった」と語るのは軍装史の研究家、辻元よしふみ氏です。今のビジネススーツはルイ14世時代の軍服に由来していて、たとえばテーラーカラーは、当時の上着の立ち襟を折り返したもの、ネクタイはクロアチア傭兵のスカーフから来ているなど興味深い蘊蓄もたくさんお持ちです。

 この辻元氏と、夫人で画家・イラストレーターの辻元玲子氏による講演会が、「軍服 その歴史とイラストレーション」をテーマに、昨秋、服飾文化学会研究例会で開催されました。
Img_42851 お二人は「図説 軍服の歴史5000年」の著者でもあります。

 まずはユニフォーモロジー (Uniformology) =軍装史学/制服学についてです。外国には膨大な資料があり研究も盛んに行われているそうです。翻って日本では軍事アレルギーが強すぎるのか、必要以上に研究されていなくて、このままでは70年前の旧陸海軍の軍装はおろか、戦後の自衛隊の服制も忘れ去られる危険があると警告を発します。
 辻元氏は1年前に起こったアイドルグループ「欅坂46」の衣装騒動に触れ、軍服を無自覚に採り入れると物議をかもすことがあるともいいます。この騒動はアイドルたちの帽子の帽章がワシの意匠で、これがナチスそっくりと批判されたことから起こったのです。
 軍服はファッションデザインの有力なネタ元です。多くのデザイナーたちがコレクションの一部にかつての軍服の意匠を盛り込んでいます。しかしどこまでなら真似してもよいか、あるいは危険かといった判断は、日頃から勉強していないと難しいといいます。軍装はそのルーツを知った上で、使うべきものなのですね。

 次に軍服の歴史を解説されました。
 軍服は今から5000年前、古代シュメールで、すでに存在していたといいます。その変遷を辻元玲子氏の写実的な復元画とともに、わかりやすくお話しされました。
 中でも興味深かったのは、やはり近代的な軍服が出現する17世紀前半頃からです。徴兵制が始まり、国家の常備軍が整備されるようになり、軍人の階級制度も整って、軍服が普及していきます。銃器も発達し、重い甲冑が廃れていったといいます。17世紀後半になると三角帽にペルシア風ジュストコルとベストが登場し、華やかになっていきます。それが最も華美になったのは18世紀後半から19世紀初め頃だそう。とくにナポレオン時代には二角帽に騎兵用肋骨服が大流行します。派手な国家色も注目で、イングランドでは赤、プロイセンでは、プロシャンブルーなど、軍服は統一色で彩られるようになります。ところが19世紀後半以降、火器の能力向上で、遠くから狙撃される危険性が増し、目立たないカーキ色が浮上します。カーキ色は第一次世界大戦ではごく普通の色となり、第二次世界大戦で迷彩色が現れ、現在に至っているのです。
 海軍も調べるとおもしろいです。ネイビーは紺色の異称ですが、これは1748年に英国海軍が紺色を導入したからだそう。ブレザーに金ボタン、Pコート、セーラー服も海軍が原点ですし、Tシャツもそうですね。
 この他、塹壕で生まれたトレンチコート、空軍パイロットが着用したフライトジャケットなど、私たちが普段、身に着けている服のスタイルは、驚くほど軍隊から来ていることがわかります。

 戦争という極限状況を背景に生まれたサバイバル服、軍服。服飾史研究の重要な分野であることを強く印象付けられた講演会でした。

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